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2018.08.23 Thursday

人のうわさも75日

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    私は世の中の法則を探すのが趣味のようなところがあります。

     

    世の中には色々な法則というのがあって、そういうものを見つけることができると、世の中で起きている現象のうち、疑問に思っていたことでもたいていのものは解決するというか、どうしてそうなっているかということが納得できるというのが実に面白い。だから、目の前でいろいろ起こっている現象の原因の共通する部分にある法則を見つけようと常に考えているのであります。

     

    例えば、いすみ鉄道の社長を退任するとどういうことが起きるか。

     

    秋田の由利高原鉄道の春田社長さんは私より人生経験が豊富な人ですから、「鳥塚さん、辞めちゃいけないよ。『社長』という肩書があるから世間は相手にしてくれているだけなんだから。鳥塚さん自身の実力や能力を相手にしてくれているんじゃないからね。」と、私に会うたびに口癖のようにそう言ってくれていました。

     

    これも、いわゆる世の中の法則の一つですね。

     

    世の中というものは、その人を相手にしているのではなくて、その人の肩書を相手にしている。

     

    まあ、そんなもんでしょう。

     

    私はそう思っていましたから、「辞める」と発表することがある種の楽しみでもあったわけです。

     

    私がいすみ鉄道の社長を退任すると発表した途端、いろいろなことが起きました。

    今まで「社長、社長」と隅にも置かない対応をしてくれていた人が急に知らん顔をし始めたり、

    しばらくご無沙汰だった人が、「聞きましたよ。お辞めになるんですって。」と言って訪ねて来てくれたり、

    あるいは、何の変化もなく、今まで通り接してくれたり、

    そうやって、私を取り巻くいろいろな人たちが、いろいろと変化していきました。

     

    「社長を退任しました。」ってお取引先の皆様方にご挨拶をしたところ、講演の依頼を受けていた先方から、「社長さんをお辞めになられたのでしたら、依頼はキャンセルします。」などと断りの連絡を入れてきたところもありましたし、「全然かまいません。引き続きお願いします。」とありがたいお言葉をいただくところもありまして、そういう人たちを目の当たりにして、私は、「へえ、そういうことなんだ。」と色々と勉強させていただきました。

     

    いすみ市の観光活性化のお仕事をいただいておりますので、退任後も沿線に顔を出すことが多いのですが、先日、会社に顔を出したところ、

    「社長、元気そうですねえ。その後どうですか。」という人もいれば、「何しに来たんだ。」という顔をする人もいる。

    「お前はもう社長じゃないんだから、来るんじゃない。」とあからさまな人もいるし、目も合わせなければ口も利かない人もいるわけで、やはり、「なるほど。おもしろいなあ。」と思うのです。

     

    シーンとしているような水面でも、1つ石を投げいれてみると、波紋が広がります。

    その波紋が、実は表面的なものではなくて、石を投げられた方は水の下であたふたして大騒ぎになるもんだから、水面下にどういうモノが潜んでいて、誰と誰とがくっついていて、誰と誰とがグループを作っていたりとか、あるいは水底の地形までわかってしまうのですから、つまりは在職中にはわからなかったことまでわかるわけで、そういうところが実に興味深かったりします。

     

    うれしいのはめったに顔を合わすことがない故郷板橋の旧友たちが、「長いあいだ、本当にお疲れ様。みんなで飲み会を企画するからいつが良い?」と声をかけてくれたり、そういう思いもかけないところで、私のことを応援してくれていた人たちがたくさんいるってことも、よくわかったのであります。

     

    例えば、いすみ鉄道でも、私が就任した時にすでにいすみ鉄道を応援してくれていた人もいれば、キハ52を導入すると発表した時からいすみ鉄道のファンになった人もいるわけで、キハ52というのはいすみ鉄道の一つの商品ですから、キハ52が走るからいすみ鉄道に来てくださる人たちというのは自社商品のファンの皆様でありますから、それはそれで大変にありがたいお客様なのでありますが、私としては、就任当初、不安な気持ちで一杯だった私を、「社長、応援するからね。」と言って支えてくれたカケス団長や吉田さん、引田さんのことは忘れることができません。

     

    先日出版の打ち合わせをしてくれた「謎解きクロス」の廣川州伸さんも、私がいすみ鉄道に就任したすぐ後に応援に来てくれた人で、私にとっては恩人の一人なんですが、4月の半ばに久しぶりにお電話をいただきました。

    廣川さんはフリーランスで活動されていらっしゃる編集者ですから、○○出版などという肩書はありません。

    電話を取り次いでくれたスタッフが、「フリーの方のようですが、廣川さんという方から取材の申し込みがありますが、どうしますか?」と怪訝そうな顔で聞きますので、「その人は良く知っている人だから、お受けしてください。」と言って取り次いでもらってゴールデンウィーク明けに取材を受けたのです。

    そうしたらその直後に退任するという発表になりまして、廣川さんは、「辞められるんだったら、ますます応援しなければなりませんね。」と新しい出版の企画をいくつか持ってきてくれているのです。

     

    廣川さんはフリーランスでお仕事をされていらっしゃる方ですから、肩書が無くなるということをお解りになっていらっしゃるんですね。

    私は、実にありがたいなあと思います。

     

    カケス団長もそうですが、最初から、つまり、無名のころから、何も結果を出していなかったころから私のことを応援してくれた人というのは、辞めると発表した後でも、今まで通り、あるいは今まで以上に、お付き合いしてくださる方々であって、そういうことも世の中の法則の一つなのではないかと考えるのであります。

     

    私は「項王の四面みな楚歌」の話をしているわけではなく、仕事のパートナーは「虞や虞や汝を如何せん」の虞美人ではありません。

    でも、栄枯盛衰ではありませんが、こういう時に人を見る目というのが養われるのかもしれませんね。

    そういう人たちを含めて、いすみ鉄道を応援してくださっているたくさんの皆様方に、何らかの形で恩返しをしなければならないと思っています。

     

    国の偉い立場のいわゆる官僚と呼ばれる皆様方ともいろいろお付き合いさせていただいておりますが、皆さん口をそろえて、

    「社長、もう十分やったのですから辞めてみたらいかがですか? 辞めると面白いことがいっぱい起きますよ。いろいろ見えてくることもありますし。」

    ここ1年余り、皆さんそうおっしゃっていただきましたが、私に見えなかったことが彼らには見えているということなのでしょう。

     

    さて、本日で退任してから72日になります。

    昔から「人のうわさも75(しちじゅうご)日」と言います。

    75日もすれば、そろそろ世の中から忘れ去られるということです。

     

    一応私はまだまだ引退したわけではありませんので、できるだけ早く今の「サンデー毎日」の状態から脱却しなければならないのでありますが、おそらく今度の仕事が自分の人生で最後の仕事になるでしょう。だから、最後の仕事になるのなら、自分の生活のことはもちろんですが、できるだけお国のためにお役にたてるような、そんなお仕事をさせていただきたいなあと思っています。

    季節がら、ちょうど戦争の話題が多く聞かれますが、戦争中は多くの若者たちが「お国のために」と言って尊い命を落としていきました。あれから70年以上が経過して、文明も文化も格段に進歩している時代になりましたから、そこに生きる人間たちも進歩しなければなりません。昔のような「お国のため」ではなくて、明るい未来を作る文化的な「お国のため」の仕事ができるようになれば、私がいつも考えている「職業を通じて自己実現をする」ということができるのではないか。

    最後の仕事を前にして、そんなことを考える今日この頃なのであります。

     

    涼しくなるような写真を1枚。

     

    こちとら、燃えるような熱い男でございますので、本日も実に涼しく過ごしておりますが、

    暑い毎日がまだまだ続きそうですので、皆様どうぞお体をご自愛ください。

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    • 2018.08.25 Saturday 00:18
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